銀行印と実印の違いは「誰が条件を決めているか」
実印と銀行印を分けているのは、はんこそのものの種類ではありません。どこに届け出たかの違いです。 市区町村に印鑑登録したものが実印、金融機関に届け出たものが銀行印(届出印)です。
この2つは条件の決まり方が違います。
- 実印: 市区町村の条例に基づく公的な登録制度。登録できる印鑑の条件が公的に定められています
- 銀行印: 各金融機関が個別に定めるもの。法令に基づく統一規定は、今回の調査では確認できませんでした
さらに、実印と銀行印を同じ印鑑にすることを禁じる法令・銀行規定も確認できませんでした。
以下は 2026年8月15日時点で、ゆうちょ銀行・みずほ銀行・三菱UFJ銀行・三井住友銀行の各公式サイトに記載されていた内容です。
実印の条件は公的に決まっている
実印は、住民登録のある市区町村に印鑑登録することで成立します。条件は各自治体の条例で定まるため細部は異なりますが、確認した2自治体ではサイズの上下限が一致しました。
松山市は「一辺8ミリの正方形に収まるもの、または25ミリの正方形に収まらないもの」を登録できない印鑑として挙げています(松山市)。富士市も「一辺8ミリメートルの正方形より小さいもの、一辺25ミリメートルの正方形より大きいもの」は登録不可としています(富士市)。
ゴム印については、松山市が「ゴム印など変形しやすいもの」、富士市が「ゴム印やインク補充型は不可」と、どちらも明記しています。
法人の場合は商業登記規則第9条が「印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない」と定めており、個人とは数値が異なります。
条件の詳細は実印のサイズ規定、登録の手続きは印鑑登録の流れで扱っています。
銀行印の条件は行ごとに違う
一方、銀行印には公的な統一規定が見つかりませんでした。各行が手続き案内やFAQで個別に条件を書いている状態で、記載の有無も内容も行によって異なります。
使えない印鑑を明記している行
三菱UFJ銀行は印鑑変更の手続きページで「シヤチハタ印ではお手続きいただけません」と記載しています(三菱UFJ銀行)。
みずほ銀行はFAQ「印鑑変更の手続きをしたい」のなかで「新しいお届け印に、シャチハタなどのゴム製印章は使用できません」と記載しています(みずほ銀行FAQ)。
記載を確認できなかった行
ゆうちょ銀行の口座開設ページには「印章と、ご本人様であることが確認できる書類(運転免許証など)をお持ちください」とあるだけで、印章の材質やサイズの条件は書かれていません(ゆうちょ銀行)。三井住友銀行の公式ページでも、使えない印鑑の条件は確認できませんでした。
これは「ゆうちょと三井住友ならゴム印が使える」という意味ではありません。公式サイト上に該当する記載を見つけられなかった、というだけです。
なおゆうちょ銀行には、通帳・カード・お届け印がない場合の窓口手続きでは印章は「お届け印でなくても差し支えございません」とするFAQもあります(ゆうちょ銀行FAQ)。届出印の扱いは、行ごとだけでなく手続きごとにも違います。
なお、銀行印のサイズ規定は、この4行のいずれの公式サイトにも確認できませんでした。販売店などで見かける具体的な数値は、公式の規定として裏づけが取れていません。
この記事で確認したのはメガバンク3行とゆうちょ銀行のみで、地方銀行・信用金庫・ネット銀行は範囲外です。
そもそも届出印がいらない口座がある
実印と違い、銀行印には「届け出ない」という選択肢が主要行に用意されています。印鑑レス口座です。
みずほ銀行は印鑑レス取引を「印鑑の代りにキャッシュカードの暗証番号等、みずほ銀行所定の本人認証で取引する方法」と定義しています。そのうえで「店頭タブレットまたは2022年2月7日以降に『みずほ口座開設&手続きアプリ』で口座開設をしたお客さまは印鑑レス口座となります」としており、条件を満たす新規口座は既定で印鑑レスになります。変更は片方向です。印鑑レス口座から印鑑あり口座への切替は店舗で可能ですが、その逆はできないと明記されています(いずれもみずほ銀行FAQ)。
三菱UFJ銀行は印鑑レス口座について「印鑑レス口座の場合、印鑑のお届けはありません」と記載し、窓口では印鑑の代わりにICキャッシュカードで本人確認を行うとしています。ただし財形預金・マル優・貸金庫の申込、他の金融機関宛の各種書類への押印、法令等により印鑑押印が必要な取引などは利用できません(三菱UFJ銀行)。
三井住友銀行は店頭での取引について「マルチナンバーレスカード(Oliveフレキシブルペイ)またはキャッシュカードと暗証番号の一致により、お届け印のご捺印の代わりとすることができます」としています。こちらも住宅ローンの申込、他の金融機関宛の各種書類への押印、法令等により印鑑押印が必要な取引では印鑑の届出が必要です(三井住友銀行)。
実印と銀行印の対比
| 観点 | 実印 | 銀行印(届出印) |
|---|---|---|
| 届出先 | 住民登録のある市区町村 | 各金融機関 |
| 根拠 | 市区町村の条例。法人は商業登記規則第9条 | 法令に基づく統一規定は確認できず。各行の手続き案内に条件が書かれる |
| サイズ | 個人は一辺8mm超〜25mm以内(松山市・富士市で一致)、法人は1cm超〜3cm以内 | 4行の公式に規定を確認できず |
| ゴム印 | 不可(松山市・富士市とも明記) | 三菱UFJ・みずほは不可と明記。ゆうちょ・三井住友は記載を確認できず |
| 届出をなくせるか | できない | できる(印鑑レス口座) |
同じ印鑑を兼用してよいのか
実印と銀行印を同じ印鑑にすることを禁じる法令や銀行規定は、今回の調査では見つかりませんでした。自治体の公式サイトにも、4行の公式サイトにも、「実印との兼用は不可」という記載は確認できていません。
関連する事実を1つ挙げます。ゆうちょ銀行は2013年6月3日に総合口座通帳等の副印鑑を廃止しました。理由は「通帳をなくされたり、盗難にあわれた場合に、副印鑑によりお届け印が偽造されることを防ぐ」ためと説明されています(ゆうちょ銀行)。
次にやること
条件は行ごとに違い、届出印を持たない口座も選べます。自分が使っている金融機関の公式サイトで、次の2点を確認してください。
- 届出印に使えない印鑑の条件が書かれているか
- 印鑑レス口座を選べるか、既存の口座から切り替えられるか(みずほ銀行のように片方向でしか変更できない例があります)